【守り人シリーズ】「蒼路の旅人(そうろのたびびと)」を紹介します

 上橋菜穂子さんの「守り人シリーズ」第6弾の「蒼路の旅人」を紹介します。タイトルに”旅人”と付くのは、新ヨゴ皇国の皇太子チャグムが主人公の物語になります。第4弾「虚空の旅人」に続き、少年チャグムの成長と国同士の政治の絡み合いや、強国の侵略が濃く描かれており、歴史小説の様相を呈しています。

蒼路の旅人
蒼路の旅人_小説版

蒼路とは

 特に明記されているわけではありませんが、蒼路には色々な意味が込められているのが感じられます。「蒼路の旅人」の舞台は大海原で、サンガル王国への援軍として新ヨゴ皇国の艦隊にチャグムが乗り込むことになります。艦隊に乗り込むことになってしまった経緯のなかのチャグムのまだ青い考え方や衝動的な行動もその一つだと思われます。そして全体を通して15歳の少年チャグムが青年へと成長していく物語になっています。思いつく限りをまとめると、蒼路とは、

  1. チャグムが旅する大海原の海路
  2. チャグムの、まだ青い、かたくなな考え方
  3. 少年から青年へと成長していく過程
  4. 暗い海に蒼い路をつくる月光(本小説のラストシーン)

などを意味しているように感じます。これから、「蒼路の旅人」を読む方は、蒼路にはどんな意味が込められているか、探しながら読むのも面白いと思います。

チャグムのファン

 今回、「蒼路の旅人」を読んで、個人的にはグッとチャグムが好きになりました。幼いころからジャンプを読んできたジャンプ脳の私は「最後は必ず正義が勝つ」結末を心から望んでおり、期待してしまいます。自分の中の正義を信じ、そのために後先考えずに行動してしまう青臭いチャグムについ気持ちを寄せてしまいました。進退窮まる状況のなかで、自暴自棄にならず、最後まであきらめずに最適解を模索し、かつ自分の気持ちにも納得できる道を探し続ける力をもつ賢いチャグムのファンになってしまうこと間違いなしの「蒼路の旅人」ぜひ読んでみてください。

(雑記)バルサとチャグムと私

バルサはスペシャリスト。短槍の達人であり、サバイバル能力に長けている。用心棒であり、命を守るという依頼を受けたら必ず遂行するプロフェッショナル。一方、チャグムは聡明な賢い少年だが、特出した個の能力があるわけではない。(もちろん皇太子としての教育を受けているため、数か国語を話せたりするが。)では、チャグムの長所は何か。物語の中で、チャグムは出会う人、関わる人に「力になってあげたい/将来が楽しみだ/なんとしても生き延びて欲しい」と思われる何かがある。それは、”意志の強さ”と万人が必ず心のどこかに持つ”正しい正義感”ではないかと思う。30代の社会人になってからチャグムと出会った私としては、チャグムの下で働きたいと思った。チャグムの穢れない正しさの下で。シュガがうらやましい。バルサとは、友人になりたい。

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